より多くの人に来てもらえるイベントを自分たちの手で

Project Story 02

Project Member 伊東昂一郎

軽い気持ちで入ってのめり込んだゼミ

 武蔵野大学スポーツマネジメントゼミは、スポーツイベントの開催を通じて、マネジメントなどのビジネススキルを修得することを目的として、スポーツに関する知識を学んだりスポーツイベントを企画したりボランティアに参加するなどの活動を行っている。2014年に結成され、2015年から本格的に動き出し、現在はパラスポーツに関連した活動を主に行っている。

 ゼミ生は30人ほどで、そのうちの一人である伊東昂一郎は副ゼミ長を務めている。伊東は“スポーツに興味がある”という軽い気持ちだけでこのゼミに入ったと言う。実際にゼミが始まってみると、徐々にパラスポーツに興味がわき始め、2年目の現在は副ゼミ長として積極的に参加している。

 1年目はオリンピックやパラスポーツに関する座学を受けて知識をつけ、2年目になると集大成として実際のイベントの企画や交渉、場所の確保に至るまで全て自分たちで決めて、自分たちで動き、実際に開催する。


初めて実現した、自分たちの手で作り上げたイベント

 伊東たちが初めて企画した「障害者スポーツチャレンジ」は昨年12月18日に行われた。今回のイベントは、パラリンピックでの正式種目であるボッチャとブラインドサッカーの体験会を行った。ボッチャは重度脳性麻痺者もしくは同程度の四肢重度機能障害者のために考案されたスポーツで、目標玉に色のついた球を投げたり転がしたりして、いかに近づけられるかを競う。ブラインドサッカーはゴールキーパー以外が盲目の選手で、転がると音が鳴る特殊なボールを使用してサッカーを行う。

 伊東たちはこの場に、昨年のリオパラリンピックに出場していたボッチャのプロである廣瀬隆喜選手をゲストとして招き、より本格的にボッチャを知ってもらおうと工夫を凝らした。抽選会も開催し、子どもから大人まで楽しめるように考えた。

 イベントの参加者はおよそ300人。初めて自分たちで企画して動いて作り上げたイベントに参加してくれた人がいたこと、参加してくれた人たちが楽しかったと言ってくれたことが伊東は嬉しかった。しかしここにくるまでには大きな壁があった。

何度も何度も練り直して超えた大きな壁

 このイベントが行われる1年以上前から企画は始まっていた。まずは、企画案を作成した。どんなパラスポーツを、いつどこで、どのようにやるのか、誰かゲストをよぶのか。予算を考慮しながら練っていく。企画案が確定したら、江東区や、パラスポーツの協会などイベントに関わる公式の団体からの許可を得ていく。

 企画書を提出する度にここはだめ、ここはいいと指摘を受けて、また練り直す。いくつもの案をあげても、パラスポーツの協会からは安全面が確保できないと許可が下りないことがほとんど。何度も何度も企画書を練り直す。それと同時に、場所の確保やゲストの出演許可の申請やアポ取り、プロジェクトメンバーだけでは人数が足りないため、イベント当日のボランティアの確保などやることは山ほどあった。めげそうになりながらもなんとかひとつひとつ片づけていった。

 ついにこの大きな壁を伊東たちは乗り越え、全団体から企画書の許可が下り、イベントを開催することができたのだった。


野球やサッカーと同じようにパラスポーツを楽しんでほしい

 初めて企画して開催まで進め、無事に終了したイベントでも、振り返ってみると反省点だらけ。伊東たちは、次は1000人の集客を目標として改善点を探っている。今はまだパラスポーツを元々知っている人がイベントに参加してくれることがほとんど。パラスポーツを全く知らない人にもアプローチしていくにはどうすればよいのかを模索中だ。

 また、伊東は同じような活動をしている人が世の中にはたくさんいることを知った。ボランティアやパラスポーツのイベントに積極的に参加していくことで、その人たちとの繋がりを作ることにも力を入れ始めた。さらに伊東は言う。

「小学生が休み時間になると、床に円を書いてボール投げてボッチャやるようになったら、いいっすよね。」

 伊東たちがゼミで活動できるのは今年が最後。集大成としてのイベント開催に向けて動き出している。伊東たちゼミ生が大きなイベントを成功させていったなら、たくさんの人がパラスポーツを野球やサッカーと同じように観戦するようになるのかもしれない。障害を持った人々が様々なことに積極的に参加できる共生社会が実現する日もきっと近い。

(Written by 齋藤萌子)

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