広がれ、パラスポーツの輪よ

Project Story 05

Project Member 伊東昂一郎

いつの間にか、本気に

 障害を持った人が積極的に参加できる社会を作る。スポーツマネジメントゼミはそんなコンセプトの元活動している。活動は主に、二年生の内はパラリンピックの歴史や障害についての知識を座学で学び、三、四年生がパラスポーツのイベントの運営である。イベントの運営の過程には、企画、協会や区への申請、場所の確保、実行などがある。このゼミではイベント運営の過程を通して、共生社会への貢献と同時にビジネススキルの習得を目指している。

 武蔵野大学経済学科の伊東昂一郎はそこで副ゼミ長を務めている。はじめはスポーツが好きだからという軽い理由で入った伊東であったが、徐々にパラスポーツに興味を持ち本気になっていった。

「このゼミでは普通じゃ体験できないことをできてますね、企業とはまた違う、学生だからできるようなこと。」

 パラスポーツイベントの運営といっても簡単にできるものではない。企画から実行にいたるまでは約10ヶ月もの歳月を費やした。


10ヶ月も前からの準備

 パラリンピックを盛り上げるにはどうしたらいいか。ゼミ内で何度も話し合った結果、パラスポーツ体験イベントを実行することになった。イベントの運営の基礎となるのが企画である。日時や場所、体験してもらうスポーツ、広告塔となるゲスト。決めなければならないことはたくさんある。いくつもの案を出し、次は協会や区、体育館への交渉。もちろん交渉も自分たちで行う。

 話し合いででた競技は10個ほどあったが、安全面などの問題もあり、協会からの許可がなかなか下りない。大変な交渉の末、許可が出たのが、ボールを的に向かって投げどれだけ近づけられるかを競う競技であるボッチャと、ゴールキーパー以外は視界を遮断してサッカーをするブラインドサッカーである。

 協会への交渉と同時に行うのが日時、場所決めである。有名な場所であると10ヶ月前でも予約が取れないこともある。少しでも人が集まるように曜日や時間帯、場所を考えた。

「土曜日だったら明日も休みだし来やすいかなとか、交通の便がいいほうがいいかなとか、とにかく人が来てくれるような日時場所を決めることを重要視しました。」

 ゲストには実際にリオパラリンピックで銀メダルに輝いた廣瀬隆喜選手を招いた。運営には武蔵野大学の生徒もボランティアとして参加してくれることになった。

 こうして2016年12月18日有明スポーツセンターで「体験しよう!障害者スポーツチャレンジ2016 in KOTO」と題されたそのイベントが開催された。

パラスポーツをもっと知ってもらうために

 イベントには約300人が訪れた。ボッチャとブラインドサッカーの体験会で楽しそうにしているお客さんも大勢いた。さらにディズニーランドのペアチケットが当たる抽選会も行い楽しいイベントとなった。

「イベントが実現して、楽しかったよって言ってもらえると、自分たちが作ったもので楽しんでもらえて嬉しいなって思います。」

 しかし、まだまだ反省点もある。特に一番大きな課題が集客である。

「僕たちは300人しか呼べなかったんですけど、大きな団体のイベントだと千人以上が集まるんですよ。僕たちもそれくらい呼べるようになりたい。」

 この問題を解決するために伊東は関東に33の支部をもつおりがみという学生団体に所属しノウハウを学んでいる。おりがみは千葉県からのバックアップを受けていて、イベントでは有名タレントや選手を呼びパラスポーツを盛り上げていこうとする団体である。

「僕個人としてはスポーツマネジメントゼミもおりがみに入っちゃえって思います。そうすることで協力して集客を伸ばしていけるのかなって。」


2020年を見据えて

 このイベント運営を通して伊東は様々なスキルを身につけた。パワーポイントを使った企画書、報告書作り、役所へのアポイントメントの取り方など、今後役に立つことばかりである。

「今年で第3回目となるイベントを初めて私たちの代が主体となって開催します。2年間の集大成として先代に負けないくらい素晴らしいものを築き上げていきます。」

「体験しよう!障害者スポーツチャレンジ2016 in KOTO」以外にも小学校の障害者支援クラスに行ってボッチャの体験会を開きパラスポーツの認知度を高める活動や、共生スポーツ祭りというイベントでゼミを紹介するなどをして力をつけている。

「実際に障害がある子と接することは命を預かっていることにもなるので、とても慎重になりました。」

 そんな伊東は2020年の東京オリンピック、パラリンピックにボランティアとして参加することが目標であるという。

「オリンピックって10万人くらいボランティアを雇うんですよ。その中から企画側からボランティアリーダーを頼まれる人がいるらしくてそれになれたらいいなって思ってます。」

 かつて300人のイベントを運営していた伊東が1000万人もの来場者数が見込まれる東京オリンピック、その指揮をとる日が来るかもしれない。

(written by 川端成宜)

0コメント

  • 1000 / 1000