大好きなファッションで、カンボジアの役に立つ。

Project Story 04
〜Sui-Joh オリジナルトートバック作りプロジェクト〜

Project Member營野彩佳

トートバッグをつくらせてください。

 日常にちいさな彩りを。こんなコンセプトで活動するカンボジア発のファッションブランドがある。日本人の浅野佑介氏がバックパッカーをしていた時に良くしてくれたカンボジアの人たちに、何か恩返しをしたいと思い始めたブランド、Sui-Johである。2016年8月19日、武蔵野大学藤本ゼミ所属の營野彩佳は、この会社での1か月間のインターンシップのため、カンボジアに降り立った。昔からファッションが好きな營野。自分が作ったものを異文化交流に役立てたいと強く希望し、Sui-Johとのコラボ商品作りにチャレンジさせてもらえることになったのである。

初めの2週間はシェムリアップのナイトマーケットでひたすら店頭に立ち、お客さんの好みやSui-Johの商品のことを知る期間だった。「商品によって、これはヨーロッパ系の人に人気とか、アジア系の人に人気とか、スゴイ分かれるんですよ。面白いですよね。」

店頭に立つ期間が終わると、次はいよいよ商品企画へ。自分自身の目線を大事にして、大学生に使いやすいものがいいと考えた營野は、トートバックをつくることを提案。iPhoneが入るポケットを作りたい。ガムを入れるスペースを作りたい。中で飲み物が倒れてしまわないような紐をつけたい。やってみたいことを浅野さんやSui-Johスタッフに英語でなんとかプレゼンテーションすると、浅野さんも「いいよ」と認めてくださった。「ありがとうございます! 頑張ります!」營野のものづくりがスタートした。

1日8時間にも及ぶ図面作り。

 無事、商品のプレゼンを終えると次は図面作りが始まった。トートバック作りの主な工程は、コンセプトを決め、図面を書き、生地を選び、図面を元に実物を作るというものである。図面作りはトートバック作りの基礎であり、最も重要な作業。図面は主に、外側の表面、外側の裏面、中を開いた図面を2つの合計4つ。高さや長さだけでなく、「バッグの裏側にクロマー(カンボジアの伝統的な生地のこと)を縫い込んでほしい」「ここにペンを入れるスペースが欲しい」など、こだわりたいところも図面に書き込む。營野はこの作業に1日8時間かける日もあったという。

「1日中、絵を描いて業務が終わる日もありました。朝から夜まで、ずっと他のトートバックとにらめっこしながら。日本から持ってきたノートが一冊書き終わってしまいました。」

そして次は図面をもとに生地を選び、鞄職人に依頼する工程へ。鞄職人はSui-Johと縁のある、家族で経営している現地の方にお願いした。職人さんと2人で床に座りこみ、英語でなんとか大きさやこだわりのある部分を説明した。しかし、後日出来上がったサンプルを見てみると、頼んでいたものと大きさが違う。そこを訂正し、次に届いたサンプルを見ると、今度はペットボトルホルダーがない。慣れない英語で何度も説明しても、なかなか伝わらないのがもどかしかった。

「せっかくカンボジアまで来て、つかんだこのチャンスを無駄にしたくない。やるならとことんやろうって思って頑張りました。」

気温38℃の中での生地選び。ついに完成へ。

 營野がもう一つ苦労したことは、生地選びである。このトートバックに最も適した生地を選ぶために灼熱のカンボジアの生地市場を巡った。外の温度は38℃。何種類もの生地を触り続ける。5時間以上、生地を選び続け、ようやくいいものを見つけて買って帰ってみると、水はけが悪くトートバックに向いていないとわかり、また振出しに戻ることもあった。生地によってプリントが滲んでしまうこともあった。生地の買い出しは3回にも及んだ。

「ここで妥協したら商品開発の費用を出してくださっている浅野さんにも申し訳ないし、私ガンコなんで、一度やるって決めたら精一杯やろうと思いました。」

日本に帰国する予定の日も迫るギリギリに、ついに7色14種類のバッグが完成した。出来上がったものを見ると、様々な人に支えられた工程が思い出され、感慨深かった。

「生地を買い付けに行くのもスタッフさんが連れて行ってくれてバッグ屋さんとか工房があったからこそ作れて。いろんな人の手を借りて1つの商品が出来上がったので、皆さんにありがとうという気持ちでした。」

カンボジアって、かわいい、かっこいい。

 その日、營野は店頭にいた。カンボジアからの帰国後、武蔵野大学の学園祭で自分が企画から行ったオリジナルトートバックを販売することになったのだ。価格は1,500円。果たして買ってもらえるだろうか。ドキドキしながら店頭に立った。「たくさん使ってほしいっていう気持ちを込めて。バックのここが魅力なんで、ここ可愛がってあげてくださいって言いながら売りました。」すると、50個用意した商品が見事に完売。大きな手応えを感じることができた。さらに2017年のゴールデンウィークに代々木公園で行われたカンボジアフェスティバルにも出店し、そこでも完売という成果を収めた。「買ってくれる時に、自分で作ったのすごいね!とかどうやって作るの?ってお客さんが聞いてくださって、それが凄い嬉しかったです。」

まだまだ発展途上のイメージや偏見を持つ人も日本には多いカンボジア。しかし、そこには、美しい伝統の生地や、素晴らしいものづくりをする職人さんたちがいる。それを世界に発信するSui-Johのようなファッションブランドもある。營野のつくったトートバッグも商品ラインナップの一つとなって、カンボジア文化との素敵な出会いを生み出している。カンボジアって、かわいいもの、かっこいいものが生まれる国。そんなイメージが一般的になる日もきっと近い。

(written by 川端成宜)


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